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2020-12-16

Letter 23 Choose the modes. 呼吸を入れ替える

子どもの頃から、“cool”だと思う人にアクセスできなかった。
自分が苦手意識があるものをいとも簡単にやってのける人や、自分にはない要素をもっている人はかっこよくて、その人を羨んで、憧れていた。
そして、それをもっていない自分を思い、自信をなくしていた。自分はその人に話しかける価値があると思えなかった。自分≠coolだった。

時々、そんな子どもの頃の無力感がよみがえることがある。誰かと比べることなんて意味のないことだと理解しているはずなのに、そういう時の自分は無意識の中でやっぱり他者と比べている。そして、どうしようもない息苦しさを感じる。どこにも行けなくて、「自分」という狭い殻の中に閉じ込められてしまうような感覚に陥る。

そんな時、ふっと目を閉じ、呼吸を入れ替えることを最近覚えた。
思考のスイッチを切り替えるんだ。

自分が見たい世界は、自分で決められる。
You can choose your modes.
それは、見たくないものから目を逸らす、というようなことではなく。
ものを見る順番やアングルを自分で決める。そのものにどう反応し、それをどう受けとめ、どんな風に咀嚼し、次のステップを導くかについてもう少しだけ意識的になる。

視線を上げれば、青い空が高く、雲が浮かんでいる。
風に木の葉が揺れている。

自分の外側に基準があるわけじゃない。
基準なんて何も存在しないのなら、自分でいい、自分のままでいい。
いままで長いあいだ、「外側」の基準に自分を照らし合わせて、欠落しているものを探していた。
もしくはその逆で、自己像を肥大化させ、その虚像に呑まれそうになっていた。
−−どちらも目には見えない、自分で作り上げた幻想−−

ある時点から、僕が目指したものはそれとは別のあり方。
移ろいゆくものごとに左右されず、ぶれない軸のようなものがほしいと願った。そういうものを、少しずつ育ててきた。
それはたぶん、ずっと昔、魂の奥底で感じたこと、望んだことを、目覚めさせることでもあった。
そのものを生きること。思考が入り込んでくる余地など残さないほど、そのものを生きること。

いまの自分は、子どもの頃の無力な自分ではない。年齢を重ねて経験を積み、あの頃にはなかった力を身につけた。あの時には諦めてしまったことでも、いまは別の道を見つけることができる。

ほんとうはそれが欲しいのに、尻込みして、思い切って向こう側にジャンプできなかった。言いたいことをうまく相手に伝えられなかった。
でも、いま、勇気を出してアクセスしてみるよ。待つところはきちんと待って、いまがその時、というタイミングを掴んで発してみる。

流れの中で、ものごとの核心を掴む。ぎこちなかった足取りが、リズムを感じられるステップに変わる。風向きが変わり、淀んでいた空気が流れ出す。そう、こういう感じ。ちゃんと行きたい方向に進んでいる。ちゃんと何かを受けとめ、自分のものにしている。そう感じることができる。

「人生を変える」なんて大袈裟なフレーズだけど、日常の中のふとした時の、小さな気づきや呼吸の変化が方向を変えていく。きっとそういうことなんだ。