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堀之内僚 // Ryo YouTube Channel

『星が生まれる場所』 Released on 2024.11.16

シングルの第1作目はこの曲、と長いあいだ大切にあたためてきた楽曲を満を持して音源化。
作詞・作曲・アレンジ、そしてサウンドプロデュースに至るまで納得のいくまでこだわった今作は、太平洋戦争中に兵舎のあった森に蛍が現れる、という新聞記事から着想を得て作りはじめた楽曲。戦争の時代に生きた人たちに自身の曽祖父や祖父の姿を重ね、彼らが見ていたであろう風景や身を置いていたであろう日常をイメージしながら描き出し、自身のルーツにもつながる記念的な作品となった。同時に、生きることで大事なものを失ってしまう人間が原点的な場所へと還ろうとする切実な願いを星や光をモチーフに詩的に描き、いつの時代にも通じる人間の普遍的な物語へと昇華させた。
サウンド面では2018年にRyoとしてリリースしたインストゥルメンタル・アルバム「Crystal line」からの流れを汲む、ピアノやシンセサイザー、弦楽器をベースにしたシネマティックな音空間の中で、浮かんできた旋律に自ら紡いだ言葉をのせて歌い、表現者として、そして生身の人間として生きる彼が捉えたイメージを、言葉や音、そして声で表現した総合的な作品となっている。

 

According to Ryo, the idea for “Hoshi Ga Umareru Basho” (English translation: Where Stars Are Born) came to him when he saw a newspaper article about fireflies appearing in a forest that once housed Japanese barracks during World War II. Beginning with the experiences of his own grandfather and great-grandfather, he went on to imagine the lives of everyday citizens during that time, and the song gradually evolved into a commemorative work linking the artist to his roots. Taking this theme a step further, he utilized the motifs of light and stars, symbols recognizable to people of all backgrounds, to represent the universality of the human experience of loss. The cinematic soundscapes of this track, rooted in piano, synthesizers, and strings, hearken back to his 2018 instrumental album, “Crystal line.” Six years later, his vision has evolved and expanded, and the result is “Hoshi Ga Umareru Basho,” featuring lyrics, music, sound, and production by the artist himself.

 

ストリーミング、購入はこちら / Listen to the track here

“Crystal line” Released on 2018.1.17

 

始まりはどこからだろう。

 

ふっと浮かんだメロディーを口ずさみながら歩いた道か。

 

シンセサイザーを机の上に置いて、一人弾き始めた川沿いの小さな部屋か。

 

 

一瞬、目の前に現れて消えた曲の全景を思い出しながら、音を鳴らす。

 

日々歩きながら聴こえてくる音を、キーボードを使って再現し、昨日までのトラックに今日の音を重ねる。

 

 

そして月日は巡り。

 

 

気付いた時にはそこに空間が立ち上がっていた。

 

自分で作ったその空間のなかで、僕は呼吸し、何かを取り戻していた。

 

 

― Crystal line ―

1. アラベスク
この世は迷宮。「はじまり」の後、世界は紋様のように幾重にも連なり、広がり、回り続ける。そこに産み落とされた僕たちは、光を求めて走り続ける。そして、いつか巡り逢う。穏やかな風が吹く場所で、僕たちは目と目を合わせ、たしかなものを結ぶ。たとえ次の瞬間には離ればなれになってしまったとしても。

 

2. reborn
あたらしい朝、あたらしい風。世界は瞬間ごとに刷新していく。
あたらしい空気に触れ、わたしは何度でも生まれ変わる。

 

3. The Flow of the Emotions
フラットな自分、晴れやかな自分、ふさぎ込む自分。胸にうごめく感情は常に形を変え、色を変える。
不安、闘い、そして浄化。いくつもの感情が声となって織り重なり、メロディーが立ち上がる。

 

4. Crystal line
思いが時の流れのなかで結晶化する。振り返れば、ひとつひとつの結晶が星のように光っている。その点を結びながらここまで歩いてきた。
つないだ線は、宇宙の闇を行く旋律。そしてその線はまた、次の点へとつながっていく。

 

5. Le passage sur l’eau clair
レストランでアルバイトをしていた頃、窓の外に広がる水辺の風景を眺めていたらメロディーが浮かんできた。揺れる水面、透き通る空の色。そのイメージは宮沢賢治の短編小説『やまなし』に結びついた。
季節の移ろいによって変わりゆく川底の風景や、蟹の親子が水の流れにのって旅する様子を、楽器の音やフランス語の響きを重ねながら表現した。

 

6. Driving Highway
夜の空気、うらぶれた思い。窓の外で過ぎ去っていく灯りと、遠いネオン。シャンパンゴールド色のフィルターにかけられた、脳裡に焼きつく夜の情景。

 

7. 記憶の扉 -A Door to the Ancient Memory-
記憶の底からピアノの音が聞こえてくる。その場所は、放課後の教室か、森の木陰か、それとも揺りかごか。
かつてそこで呼吸した、あたたかな陽が差し込む場所。もう戻れないその場所の記憶を、古いアルバムのように胸にしまう。

 

8. White Room
曇り空の昼下がり。静かな風が吹いて、カーテンが揺れている。眩しい朝、開け放った窓から空と海が見える。
わたしはこの場所で世界を見つめている。どんなことがあってもここに戻ってくる。わたしの小さな白い部屋。

 

 

 

曲を作ることは、自分の内面にあるイメージを取り出してくることだと思っていた。

 

でも、思えばそのイメージは、外界にある多種多様な音に共鳴して形作られたものだった。

 

 

自分の内側にあると同時に、外側にも存在するもの。

 

 

そう捉えたら、内面と外界、というふうに区切っていた境界線が薄くなって、より広々とした世界に出られた気がした。

 

 

この宇宙で鳴っているあらゆる音に耳を澄ませる。

 

共鳴した音に返答するように、自分の身体を通して音を発し、今度はその音に別の誰かが耳を傾ける。

 

 

そんな限りない循環の中で、心と心が見えない通路でつながっていきますように。

 

心地よい響きが世界にみちていきますように。

 

ストリーミング、購入はこちら / Listen to the album here

 

Letter 01 世界とつながる感覚 曲作りについて