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2018-01-22

ウェブサイト「Ark on the wind」について

 ふだん感じたり考えたりしていることを、まわりにいる人たちに(今まわりにいない人たちにも)もっと正確に、ちゃんと伝えたいと思っていた。それで、これまでに作ってきた曲がアルバムという形になったタイミングで、ウェブサイトを作り、アルバムといっしょに公開しようと決めた。
 ウェブサイトはどんな場所にしようか。そのコンセプトやタイトルを考えていて、最初は、自分の部屋とか、水辺のイメージが頭に浮かんだ。一人で音楽を聴いたり本を読んだり、友人たちが訪れてきて一緒にコーヒーを飲みながら語らう部屋。もしくは人が集い、そこで憩うような、明るい水辺。忙しい日々のなかで、自分にとっても訪れてくれる人にとっても、ほっと息をつける場所にしたいと考えた。

 しかしある時、ふとこんな考えが浮かんだ。毎日いろいろな場所を歩き、何かを見たり聴いたり、誰かと言葉を交わしたりしている自分自身の身体がひとつの部屋(=容れ物)みたいなもので、僕たちはまるで、その容れ物の中に入りながら、数知れない時や空間を渡り歩き、あらゆることを体験しながら感じたり考えたりしているようだ、と。そして、めまぐるしく変化していく日常はそれ自体が意思をもった生き物のようで、目には見えないけれど絶えず方向を変えて流れていく風を思わせる。その風に乗って僕たちは毎日を生きていて、時にその風は思いもよらない場所へと僕たちを運んでいく。風に乗った部屋、なんだか『オズの魔法使い』みたいだ。

 だけどその部屋も今、姿かたちを変えつつある。今まで身を置いていた場所も、目の前にあるものですら、刻一刻と変化している。前に進むために必要な機能が備わり、古びた形は時の波に削ぎ落とされていく。それがこの世界の成り立ち方なのだろう。人は自分という容れ物の中でそれぞれの思いを抱えながら、変化し続ける世界のなかを泳いでいくしかない。
 たとえ風向きや潮の流れはコントロールできなくても、人はただ風に流されているだけではない。今日食べるものが明日の身体をつくっていくように、今日出会う人、景色、気づきが未来を形づくっていく。今日という一日を選び、舵を切っているのは自分自身だ。もしこの身体が風に乗った容れ物、船のような存在であるなら、そこに安心して腰を落ち着けられるようにしたい。突風に吹き飛ばされないよう、その船体を丈夫にしておかなければならない。目指すべき方向を定め、必要なことを学び、大事なものは必死で守る。すべての感覚を開き、風向きを感じ、潮の流れを読みながら進路を決めていく。そして目的地へ向かうと同時に、心をあずけられる場所や、変わらないものにしっかりとその錨を下ろしていたい。
 宇宙の暗闇の中にポツンと浮かんだ地球の上で、太陽が照らし出した景色を目にして心が動く。世界の片隅で発せられた音が空気を伝わってこの耳を震動させる。この容れ物の中にいて、その窓から見た景色や感じとめた音、心に浮かんだ思いを、この場所から発信していこうと思う。